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2004年03月29日

●桜ノ思イ出ハ儚ク

「…はよ帰れよ~お前ら、寄り道すんなよー」
「せんせもはよ帰りやー」

生意気な言葉を残して去っていく生徒たちを、目の端で追いながら塾の先生の仕事が終わる。後片付けをして、先輩に挨拶をしたらまだ少し肌寒さが残る夜にむかって、歩き出す。

(続き読みたい方は、>>See all textをおしてね)

暖かくなってきたとはいえ、まだひんやりとするバイクに跨りながら、今日の授業のことを思い出してみる。2年やったけれど、納得のいく授業なんて数えるほどしか出来なかった。いや、納得したと思っていた授業も思い返せば、またどうにも恥ずかしいような内容だった。

「この仕事は、100回に1回まともな授業が出来れば、自分を褒めてやれ」
始める前に言われたこの言葉は、1000回に1回だったかもしれんな、と、はにかみながら笑った。

信号はまるでその考えを助けるように、バイクの足並みを止める。踏切をわたって角を左に曲がった。ほとんどいつも人を見かけない交差点に数人固まって歩いていた。予想外の人並みに、

「そういえば、花見の季節だったな」

と、季節感のないことを思った。寒いとしか思っていなかった日はいつのまにやら過ぎて、春になった。


「にぶくなったな」

そうも思った。昔は、もっと「季節のにおい」に敏感だった。
雨が降る前は雨のにおいを感じたし、土には土のにおいがあって季節の変わり目を、まるで向こうから教えてくれるようにわかったものだった。生傷が絶えなかった子どもの頃、自然は感じるものじゃなく、触れるものだった。


バイクを止めた。

11時過ぎた今は、ほとんど人通りもなく花見しているのは自分一人だった。桜は夜など関係ない、といわんばかりに渾身の力で咲き誇っていた。
高貴な匂いがする梅、凛と空へ伸びる竹、威風堂々とした松に比べて、桜はどこか艶のある、そして儚げな香りがする木だ。そして、朧気でもある。

梶井基次郎に
「桜の樹の下には、屍体が埋まっている」
と、こう言わしめた桜は今夜も咲いていた。


「さくら、綺麗だね」
聞こえないはずの声がした。
ありえなかったとしても、そう自分に語りかけられた気がした。
桜の季節を待たずに別れた思い出も、木の下に埋まっているのかも知れない。

春はすぐそこだった。
でも、二人はその春よりも、冬と一緒に過ぎた恋を流そうと決めたのだった。


思いにふける頬を少し温度の低い風が撫でていった。
心地よいというには少し肌寒い。


「帰ろう」


エンジンを吹かし、ヘルメットを深くかぶりなおした。
黒いヘルメットに、桜が写りこんでいた。

道路に黒い筋を残して、発進したバイクの跡を縫うように桜はその花びらを被せた。

(桜の思い出でしたー、笑 なんやはずかしっ)

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写真集も新装開店。
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コメント

年々、桜を怖く感じてきてます。
そうだ、「桜の樹の下には・・・」と聞いたあたりからだ。
塾の先生の思い出はいっぱいある!
初めて映画を見に行ったデートは塾の先生とでした。
(うーん、意味が違うかなあ)

>綴木さん

塾の先生とデートですか…いいなぁ(違

うちは恋愛御法度ですからねー
中学生相手に恋愛しませんけどねー、笑

甘酸っぱい思い出でもあったら、いつか書いてください♪

予備校の先生に憧れててよく質問に行ってた、笑。
香水の匂いにドキドキして結局解説聞いてなかったり…。
気がつけば、今はそんな先生の後輩だったりします。

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